2010年5月26日水曜日

ステップだけで捌け

今日は、知らぬ間に自分で作った制約に縛られているという話を
しましょう。


とある空手の審査会でのことでした。


先生は、私に近づき耳元で、
「今日は、ステップだけで、捌け!」と指示を与えた。


*捌(さばき)
=相手の攻撃を受け流し、最小限の力で相手を制圧する動き



「え、ステップだけで?」

それは、最近の本部での練習のテーマでもあった。
先生は、ステップが上手く使えていないみんなに、捌きの真髄を見せ
たかったのだ。

しかし正直、技を限定されると捌きはきつい、特に体の大きくない
私にはなおさらだ。

ステップだけで捌くとは、相手の攻撃を見切りパンチや蹴りを使わず
にサイド、バックに回り込まなければならないのだが、ポジショニング
(回り込み)の過程で打撃やつかみによる崩しがないとかなり難しい。

もちろん何かの試合のルールのように、下がったらだめインファイト
のみ、でもつかみはだめのような、現実にありえない限定よりは
ましなのだが。


案の定、動きがかなり悪くなってしまった。
回りの人には見た目、それなりに捌けているように映ったかもしれない。
しかし、いつもならこういうときにはこう動くという得意な動きが使え
ないわけだからかなり一杯一杯だった。


そして最後に三段を受ける人の相手をすることになったのたが、
思うように体が動けない自分がいた。

途中で「蹴ってもいんだよ!」の先生の声が聞こえた。
しかし、崩しの蹴りも出せず、一発も良いのをもらった分けではないが
結局捌けずに時間切れとなった。



こんな話がある、人間に飼われている象は、子像のときに足にロープを
巻かれ、そのロープを木杭に縛ると、最初は逃げようとする。
ところが子像には木杭を抜く力はなく、しばらくするとあきらめて
おとなしくなる。

その後、体も大きくなって簡単に木杭を抜く力があるはずなのに、
同じ木杭にロープで縛られるとおとなしくなってしまう。

自分で限界を作ってしまったのだ。
少し学習能力があり頭が良いことか裏目に出てしまっているのだ。



昔、ある技限定で捌きをしようとして上手くいかなかったことが、
頭に残っていて、今回もこれは無理だの否定から入ってしまって
いたのだ。結局その時は、自分で作り上げた世界を出れず
じまいだった。

もちろんできると思ってやってもできないこともある。
ただ少なくとも、「蹴っても良いんだよ!」の先生の声に、体が反応
して蹴りは出せたはずだ。自分で難しいと決めてしまいタイミングを
逸してしまったのだ。


先生は少しがっくりした顔で、
私の耳元で「最後決めてくれたらな~」と・・・・

帰りの道中、最後の言葉が私の身に染みてきた。


修業は続く