今回は、15年ほど前の地方での空手の審査会での話をしましょう。
当時、芦原先生は全国を回って昇級昇段審査を行っていました。
駅で出迎えてくださった方は、ふだん審査会でしか芦原先生とお会いし
ません。ですので皆さん緊張されてとても固い表情でした。
中でも、運転を任された若者は、初めて芦原先生を助手席に乗せて
本当にガチガチに緊張していました。
先生は車に乗り込むと、運転手と話を始めました。
(いつも先生のほうがほとんど一方的にしゃべるのですが)。
そして、運転手は先生の話を聞きながら車を発進させました。
すると、「オオー」と後ろから悲鳴に似た声が聞こえました。
後ろの席で、まだ車に乗ろうとしていた人が片足を車内に突っ込んだ
ままだったのです。
即座に先生のかん高い「止めろ!」の一言が響き、間一髪のところ車は
止まり、けが人もありませんでした。
そのときの運転手の目は、かなり視野の狭い状態(近い間合いを見ている
状態)でした。
これは、極限の緊張から、視野が狭くなり、いつも普通にできるはずの手続
き、思考ができなくなってしまったのでした。
人間の目は、一つのことに集中すると、他のものは見えにくくなります。
特に緊張しすぎると、一つのものにとらわれてしまいがちです。
こんなとき目をちょっとそむけ、焦点を遠くに持っていくことで、
緊張が和らぎ、視野を広げることもできます。
もちろん、ある程度緊張することも大切なことで、危機的状況において
リラックスしすぎても困りますけど!
心と目(体)はつながっているということには気付いていただけたで
しょうか?
今回の話は、一つのことに集中する目と、遠くのものを一度に広く浅く見る
目を、時と場合により使い分ける必要があるということにつながります。
さて、次回は先生の目の使い方についてお話したいと思います。
修行は続く
2007年9月6日木曜日
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