2007年8月9日木曜日

緊張と目

今回は、15年ほど前の地方での空手の審査会での話をしましょう。
当時、芦原先生は全国を回って昇級昇段審査を行っていました。


駅で出迎えてくださった方々は、ふだん審査会でしか芦原先生とお会いし
ませんので、皆さん緊張されてとても固い表情でした。中でも、運転を任
された若者は、初めて芦原先生を助手席に乗せて本当にガチガチに緊張
していました。

先生は車に乗り込むと、運転手と話を始めました。(先生のほうがほとんど
一方的にしゃべるのですが)。そして、運転手は先生の話を聞きながら車を
発進させました。

すると、「オオー」と後ろから悲鳴に似た声が聞こえました。後ろの席で、
まだ車に乗ろうとしていた人が片足を車内に突っ込んだままだったのです。
即座に先生のかん高い「止めろ!」の一言が響き、間一髪のところ車は
止まり、けが人もありませんでした。


そのときの運転手の目は、かなり視野の狭い状態(近い間合いを見ている
状態)でした。


これは、極限の緊張から、視野が狭くなり、いつも普通にできるはずの
手続き、思考ができなくなってしまったのでした。


人間の目は、一つのことに集中すると、他のものは見えにくくなります。
特に緊張しすぎると、一つのものにとらわれてしまいがちですので、
逆に、目をそむけ、焦点を遠くに持っていくことで、緊張が和らぎ、
視野を広げることもできます。

もちろん、ある程度緊張することも大切なことで、危機的状況において
リラックスしすぎても困ります。

また、心と目(体)はつながっているということにも気付いて
いただけたでしょう?

今回の話は、一つのことに集中する目と、遠くのものを一度に
広く浅く見る目を、時と場合により使い分ける必要があるという
ことにつながります。


さて、次回は先生の目の使い方についてお話しましょう。



修行は続く

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